不動産の売却時に「譲渡所得」が出ると、所得税および住民税が課されます。これらの税金を総称して「譲渡所得税」と呼びます。
譲渡所得は、簡単にいえば「売却益」を指し、購入時の金額から売った金額や売買にかかった費用などを差し引いて算出します。ここで注意が必要なのが、購入時の金額がわかる当時の契約書などの書類があるかどうか。購入時の金額がわからなければ「売却金額の5%の金額で購入した」とみなされてしまい、税額が跳ね上がるおそれがあります。
ただ判例では、年に2度公表されている「市街地価格指数」を基にした取得費の計算が妥当とされた事例もあることから、状況によっては購入時の金額がわかる書類がなくても税額を抑えられる可能性があります。
譲渡所得は、次の計算式から算出します。
譲渡所得=譲渡収入金額−(取得費+譲渡費用)
不動産の購入代金がわからない場合は、先述のとおり譲渡収入金額の5%で取得したとみなされてしまいます。
ここでは、3,000万円で購入し、10年後に5,000万円で売却した土地の譲渡所得を簡単に計算してみましょう。売買時には、それぞれ売買金額の3%の諸経費がかかったと想定します。
譲渡所得は「1,760万円」と計算できました。
次に、購入時の金額がわかる書類がなく「売却金額5,000万円×5%=250万円」で取得したとみなされるケースを計算してみます。
譲渡所得は「4,600万円」に跳ね上がってしまいました。
譲渡所得に対する税率は、以下のとおりです。
所有期間5年以下 | 39.63%(所得税30.63%・住民税9%) |
所有期間5年超 | 20.315%(所得税15.315%・住民税5%) |
このケースでは、購入時の金額がわかる書類がある場合は「1,760万円×20.315%=357.54万円」の税金が課され、書類がなく概算取得費になる場合は「4,600万円×20.315%=934.49万円」が課されることとなります。その差は500万円以上と歴然です。
基本的に、購入時の金額がわかる売買契約書や工事請負書などがない場合は、売却金額の5%という概算取得費でみなされてしまうというのはここまでのとおりです。しかし、2000年には、購入当時の金額がわからないにもかかわらず、売却金額の5%ではなく「市街地価格指数」から計算した取得費が妥当であると結論づけた判例があります。
市街地価格指数とは、日本不動産研究所が年に2回公表している地価の推移を表したデータです。つまり、この判例では、購入時の地価から取得費を算出したということになります。
とはいえ、裁判となったすべての事例で市街地価格指数を使った取得費の算出が認められてたわけではありません。公示地価を取得費の根拠とできるかが争われた裁判もありましたが、多くは棄却されています。
したがって、市街地価格指数等を取得費の根拠とできるかどうかは、ケースバイケースとしかいいようがありません。
購入時の金額がわかる書類を見つけておくことは、譲渡所得税を抑える方法の1つです。一方、概算取得費で計算することになってしまったとしても「マイホーム特例」や「取得費加算の特例」など、状況に応じた適切な控除特例を適用させることによって節税できる可能性があります。
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